PT・OTは生活介護で何をしている? ~身体機能だけではない、呼吸・食事・日常生活を支えるリハビリ~
2026/10/28
「生活介護でもリハビリは受けられるの?」
「病院でのリハビリとは何が違うの?」
「車いすを使用していても、リハビリを続ける意味はあるのでしょうか?」
生活介護の利用を検討されているご本人やご家族から、このような疑問を持たれることがあります。
リハビリテーションというと、歩行練習や筋力トレーニング、関節を動かす運動などを思い浮かべる方が多いかもしれません。
もちろん、こうした身体機能へのアプローチも重要です。
しかし、生活介護で行うリハビリテーションの役割は、それだけではありません。
呼吸を少しでも楽にすること。食事を安全に楽しむこと。身体に負担の少ない姿勢をつくること。そして、今ある身体機能を大切にしながら、より良い日常生活を送ること。
これらもリハビリテーションの大切な目的です。
栃木県足利市にある「生活介護 虹をつかもう」には、リハビリテーションの専門職である理学療法士(PT)と作業療法士(OT)が在籍しています。
今回は、生活介護におけるPT・OTの役割と、当施設が大切にしている専門的なリハビリテーションについてご紹介します。
理学療法士(PT)と作業療法士(OT)はどんな専門職?
まず、PTとOTの違いについて簡単にご説明します。
理学療法士(PT)とは?
理学療法士は、身体の基本的な動作や運動機能に関わる専門職です。
例えば、
- 関節の動きを維持・改善する運動
- 筋力や持久力の維持・向上
- 寝返りや起き上がりなどの動作練習
- 座位や立位の姿勢調整
- 歩行や移乗動作へのアプローチ
- 呼吸機能や運動耐容能に配慮したリハビリ
などを行います。
単に身体を動かすだけではなく、病気や障害による身体機能の変化を評価し、その方に適した運動や姿勢を考えることが役割です。
作業療法士(OT)とは?
作業療法士は、食事、更衣、整容、趣味、余暇活動など、日常生活に必要なさまざまな活動を支える専門職です。
例えば、
- 食事動作へのアプローチ
- 手や腕の動きを維持する運動
- 日常生活動作の練習
- 車いすや福祉用具の活用
- 姿勢の調整
- 余暇活動への参加支援
- 認知機能や心理面への配慮
などを行います。
ここでいう「作業」とは、製品を作る仕事だけを意味するものではありません。
食事をする、顔を洗う、人と交流する、好きな活動を楽しむことも、作業療法が対象とする大切な生活行為です。
PTとOTは専門領域に違いがありますが、実際の生活場面では重なる部分も多く、お互いの専門性を生かしながら支援を行います。
病院のリハビリと生活介護のリハビリは何が違う?
病院でのリハビリテーションは、病気やけがによって低下した身体機能の回復や、退院後の生活に向けた能力の改善などを目的として行われることが多くあります。
一方、生活介護でのリハビリテーションは、日々の生活を支えるという側面がより大きくなります。
もちろん、身体機能の改善を目指すこともあります。
しかし、それと同じくらい大切なのが、現在の身体機能をできるだけ維持し、二次的な障害を予防しながら、快適に生活することです。
例えば、車いすを使用されている方の場合、歩けるようになることだけがリハビリの目標ではありません。
長時間座っていても身体に負担がかかりにくい姿勢をつくること。
関節が硬くならないようにすること。
介助を受ける際の痛みや負担を減らすこと。
食事のときに安定した姿勢を保てるようにすること。
こうしたことも、その方の生活の質を高める重要なリハビリテーションです。
私たちは、**「何ができるようになるか」だけではなく、「どうすれば今の生活をより良くできるか」**という視点を大切にしています。
車いす生活を支える身体機能へのアプローチ
当施設では、車いすを使用されている利用者様が多くいらっしゃいます。
車いすで長時間過ごしていると、同じ姿勢が続くことで筋肉や関節が硬くなったり、身体の一部分に圧が集中したりすることがあります。
また、脳性麻痺や脳血管疾患などによって筋肉の緊張が強くなり、姿勢を保つことが難しい方もいらっしゃいます。
そのため、PT・OTは一人ひとりの身体の状態を確認しながら、次のような支援を行っています。
関節の動きを維持するための運動
関節を動かす機会が少なくなると、筋肉や関節周囲の組織が硬くなり、関節拘縮につながることがあります。
関節が硬くなると、着替えや排泄、入浴などの介助が難しくなるだけでなく、痛みや皮膚トラブルの原因になることもあります。
そのため、身体の状態に合わせて無理のない範囲で関節を動かし、柔軟性の維持を目指します。
姿勢を整えるポジショニング
車いす上で身体が左右に傾いていたり、骨盤が後ろに倒れていたりすると、一部分に圧が集中しやすくなります。
また、姿勢の崩れが呼吸や食事のしやすさに影響することもあります。
PT・OTは、身体の変形や筋緊張なども考慮しながら、クッションや支持具などを活用して姿勢を調整します。
大切なのは、見た目だけを整えることではありません。
その方にとって苦痛が少なく、呼吸や食事がしやすく、安定して過ごせる姿勢をつくることです。
褥瘡(床ずれ)予防への取り組み
車いすを使用されている方にとって、褥瘡予防は重要な課題です。
PT・OTは、座位姿勢や身体にかかる圧力、車いすとクッションの適合などを確認します。
看護師による皮膚状態の観察とも連携し、身体の外側と内側の両面から褥瘡予防に取り組んでいます。
呼吸器疾患のある方へのリハビリテーション
当施設のリハビリテーションで特に大切にしているのが、呼吸器疾患や呼吸機能に問題を抱える方への支援です。
生活介護の利用者様の中には、酸素療法を必要とする方や、痰の排出が難しく吸引を必要とする方もいらっしゃいます。
また、身体の変形や筋力低下、神経筋疾患などによって、十分に胸郭を動かすことが難しい方もいらっしゃいます。
呼吸は生命を維持するための基本的な機能です。
しかし、身体を動かすことが難しい方では、呼吸に関わる筋肉や胸郭の動きが制限され、呼吸が浅くなったり、痰を十分に排出できなくなったりする場合があります。
そのため、私たちは四肢の運動だけでなく、呼吸状態にも配慮したリハビリテーションを行っています。
呼吸をしやすくするための姿勢調整
呼吸のしやすさは、姿勢によって変化することがあります。
例えば、体幹が大きく前に倒れていたり、胸部が圧迫されていたりすると、胸郭が十分に動きにくくなる場合があります。
そこで、身体の状態に応じて座位や臥位の姿勢を調整し、呼吸に負担の少ない姿勢を検討します。
胸郭の動きへのアプローチ
胸郭とは、肋骨や胸骨、胸椎などから構成される胸の部分です。
呼吸するときには、この胸郭が動くことで肺が膨らみやすくなります。
身体の変形や筋肉の緊張などによって胸郭の動きが制限されている場合には、状態に応じた運動や姿勢調整などを検討します。
ただし、強い力を加えて胸郭を動かすような方法は、痛みや骨折などの危険を伴う場合があります。
そのため、疾患や骨の状態、呼吸状態などを十分に考慮し、安全な方法を選択することが大切です。
排痰を考慮した支援
自分で十分に咳をすることが難しい方では、痰が気道にたまりやすくなることがあります。
呼吸リハビリテーションでは、姿勢調整や呼吸方法などを通じて、痰を排出しやすい状態を目指すことがあります。
必要な場合には、看護師による吸引などの医療的ケアと連携します。
なお、呼吸リハビリの方法は疾患によって異なり、すべての方に同じ方法が適しているわけではありません。
「呼吸を楽にするために何が必要か」を、看護師とリハビリ専門職が一緒に考えることを大切にしています。
循環動態にも配慮した安全な運動プログラム
リハビリテーションでは、身体を動かすことそのものが目的になってしまうことがあります。
しかし、疾患や身体状況によっては、運動が心臓や呼吸器に負担をかけることもあります。
特に、呼吸器疾患や循環器疾患をお持ちの方、長期間活動量が少ない方などでは、運動中の身体の反応に注意が必要です。
私たちは、単に「何回運動するか」「どのくらい筋力をつけるか」だけではなく、運動によって身体にどの程度の負担がかかっているかを考慮しています。
運動前後の身体状態の確認
必要に応じて、
- 血圧
- 脈拍
- 血中酸素飽和度(SpO₂)
- 呼吸数や呼吸の様子
- 顔色
- 疲労感
- めまいや息苦しさ
- 浮腫などの身体状態
を確認しながら、運動の内容や負荷を検討します。
特に酸素療法を行っている方では、安静時には状態が安定していても、身体を動かすことでSpO₂が低下する場合があります。
また、運動によって血圧や脈拍が大きく変動する方もいらっしゃいます。
そのため、必要に応じて運動を中断したり、負荷を軽くしたりする判断も重要です。
その日の体調に合わせて運動内容を変更する
生活介護では、利用者様が毎回同じ体調で来所されるとは限りません。
「今日は少し疲れている」
「昨夜はあまり眠れていない」
「いつもより呼吸が速い」
といったこともあります。
そのような場合には、予定していた運動を無理に行うのではなく、その日の身体状態に合わせて内容を変更することもあります。
リハビリを実施することだけでなく、必要に応じて休息を選択することも専門的な判断の一つです。
看護師と情報を共有しながら、無理のない運動プログラムを考えています。
食事場面でもPT・OTの専門性を生かしています
リハビリ専門職の役割は、運動や姿勢調整だけではありません。
私たちが大切にしているもう一つの取り組みが、食事場面での支援です。
食事は、栄養を摂取するためだけではなく、毎日の楽しみでもあります。
しかし、脳性麻痺や脳血管疾患、神経筋疾患などのある方では、食べ物を口に運ぶことや、噛むこと、飲み込むことが難しい場合があります。
そのため、食事介助では、単に食べ物を口へ運べばよいというわけではありません。
食事中の姿勢を整える
例えば、食事中に頭が大きく後ろへ反っている場合や、体幹が左右に傾いている場合には、飲み込みに影響することがあります。
また、身体が不安定な状態では、食事そのものに集中することが難しくなる場合もあります。
PT・OTは、身体機能や姿勢の専門的な視点から、食事をしやすい座位姿勢を検討します。
一口量や食事のペースに配慮する
食事介助では、
- 一度に口へ運ぶ量
- 食べ物を口へ入れるタイミング
- 飲み込むまでの時間
- 口の中に食べ物が残っていないか
- 食事中の姿勢の変化
- 疲労の程度
などに注意を払います。
例えば、食事が進むにつれて疲労が強くなり、姿勢が崩れたり、飲み込みに時間がかかったりする場合があります。
そのような変化に気付くことも、安全な食事介助につながります。
摂食・嚥下の専門職との役割の違い
ここで一つお伝えしておきたいことがあります。
摂食・嚥下機能の専門的な評価や訓練では、言語聴覚士(ST)が重要な役割を担っています。
当施設のPT・OTが、言語聴覚士と同じ専門的な嚥下評価を行っているということではありません。
しかし、PT・OTにも、姿勢、身体機能、上肢の動き、食事動作などを評価する専門性があります。
こうした視点を食事場面に生かすことで、より安全で負担の少ない食事介助を考えることができます。
また、むせ込み、湿った声、口腔内残留、食事時間の延長など、気になる変化が見られた場合には、看護師と情報を共有し、必要に応じて主治医や言語聴覚士などへの相談につなげます。
むせ込みがなくても誤嚥している場合があるため、見た目だけで飲み込みの安全性を判断することはできません。
「専門外だから何もできない」のではなく、「自分たちの専門性を生かしながら、必要な部分は他の専門職につなぐ」。
このような姿勢を大切にしています。
看護師とPT・OTが連携することのメリット
当施設では、看護師による医療的ケアとPT・OTによるリハビリテーションを、それぞれ独立したものとして考えていません。
例えば、酸素療法を必要とする方がリハビリを行う場合、PT・OTは身体機能や運動内容を検討し、看護師は呼吸状態や全身状態を確認します。
また、褥瘡が心配される方では、看護師が皮膚の状態を観察し、PT・OTが姿勢や圧のかかり方を確認します。
食事中にむせ込みが見られる方では、看護師が健康状態や誤嚥の兆候に注意し、PT・OTは食事姿勢や食事動作の面から支援を考えます。
このように、それぞれの専門職が異なる視点を持つことで、一人の利用者様の状態をより多面的に捉えることができます。
医療的な安全性を考えながら、生活の質を高めるためのリハビリを行えること。
これは、看護師とリハビリ専門職が在籍する当施設の大きな特徴の一つです。
リハビリの効果を施設の外の生活にもつなげたい
生活介護で過ごす時間は、利用者様の生活の一部分です。
ご自宅やグループホームで過ごす時間も、同じように大切です。
そのため、私たちは施設でリハビリを行うだけではなく、必要に応じてご家族やグループホームの職員とも情報を共有しています。
例えば、
「このクッションを使用すると座位が安定しやすい」
「この姿勢の方が食事中の身体の負担が少ないようです」
「最近、右側の関節が硬くなってきている」
「運動中に疲れやすくなっている」
といった変化を共有することで、日常生活全体の支援につなげることができます。
また、主治医や医療機関との連携が必要な場合には、看護師などと協力しながら情報提供を行います。
施設で行ったリハビリが、その場限りのものにならないようにすることも重要だと考えています。
「リハビリをしたから良い」ではなく「生活が良くなったか」を大切に
私たちは、リハビリテーションの成果を、筋力や関節の動きだけで判断するものではないと考えています。
例えば、
以前より楽な姿勢で車いすに座れるようになった。
食事中の姿勢が安定した。
身体の緊張が和らぎ、介助時の負担が少なくなった。
呼吸状態に配慮しながら、無理のない範囲で身体を動かす機会が増えた。
好きなレクリエーションに参加しやすくなった。
こうした変化も、生活の質を高める大切な成果です。
特に重度の身体障害がある方では、身体機能を大きく改善させることが難しい場合もあります。
しかし、だからといってリハビリに意味がないわけではありません。
今ある機能を大切にすること、苦痛を減らすこと、二次的な障害を予防することも、重要なリハビリテーションです。
少人数の生活介護だからこそ、一人ひとりに向き合う
「虹をつかもう」では、少人数の生活介護ならではの、きめ細かな関わりを大切にしています。
リハビリにおいても、すべての方へ同じ運動を行うのではなく、一人ひとりの身体状況や生活上の課題を考慮します。
身体の状態は日々変化します。
昨日できたことが、今日は難しい場合もあります。
反対に、以前より身体の動きが良くなっていることもあります。
こうした小さな変化を見逃さず、必要に応じて支援方法を見直していくことが大切です。
また、リハビリは専門職だけが行うものではありません。
PT・OTが考えた姿勢調整や身体の使い方を、生活支援員や看護師などの日常的な支援にも取り入れることで、施設で過ごす時間全体が身体機能の維持や生活の質の向上につながります。
「リハビリの時間だけ身体をケアする」のではなく、「日常生活の中にもリハビリの視点を取り入れる」。
これが私たちの大切にしている考え方です。
最後に ~生活介護のリハビリは、より良い毎日のために~
理学療法士や作業療法士が生活介護で行うことは、筋力トレーニングや関節運動だけではありません。
呼吸器疾患のある方への呼吸状態に配慮したリハビリテーション。
血圧や脈拍、SpO₂など循環・呼吸状態を考慮した運動プログラム。
車いす上での姿勢調整や褥瘡予防。
食事中の姿勢や摂食機能への配慮。
日常生活動作の維持や、介助負担の軽減。
そして、安心して活動に参加するための身体づくり。
これらすべてが、生活介護におけるリハビリテーションの大切な役割です。
私たち「生活介護 虹をつかもう」では、PT・OTと看護師、生活支援員が連携しながら、一人ひとりの身体状況や医療的なニーズに合わせた支援を行っています。
「リハビリをすること」が目的なのではなく、「その方が少しでも快適に、安心して、その人らしい生活を送れること」が目的です。
医療的ケアが必要な方も、車いすを使用されている方も、身体機能に大きな制限がある方も、それぞれに合った支援の方法があります。
これからも私たちは、医療・リハビリ・福祉の専門性を生かしながら、利用者様の生活全体を支える取り組みを続けてまいります。
「生活介護でもリハビリを受けられるの?」
「呼吸器疾患があっても運動できる?」
「車いすでの姿勢や食事の様子が気になる」
そのようなご相談がありましたら、お気軽にお問い合わせください。
生活介護「虹をつかもう」は、これからも一人ひとりの身体と生活に寄り添い、より良い毎日を支えてまいります。
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児童発達支援と放課後等デイサービス 虹をつかもう
栃木県足利市八椚町381-8
電話番号:0284-64-9483
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