「体温が高い=発熱」とは限らない
2026/07/01
私たちは体温が37.5℃を超えると、「熱がある」と考えることが多いでしょう。
もちろん感染症などではその考え方で問題ありません。
しかし、障害児のお子さんでは、体温が38℃近くあっても感染症ではないことがあります。
これは、身体の中で熱が作られすぎているのではなく、「熱を外へ逃がすことが苦手」だからです。
つまり、体温計の数字だけでは判断できないことがあるというのが大きな特徴です。
私たちの身体はどうやって体温を調節しているの?
健康な人の身体は、常に約36〜37℃程度に保たれるように調節されています。
暑くなると
汗をかく
血管を広げる
呼吸が少し増える
などによって熱を逃がしています。
逆に寒くなると
血管を縮める
身体を震わせる
ことで体温を維持しています。
この働きを「体温調節」といいます。
障害児では体温調節が苦手なことがあります
脳性麻痺や重症心身障害のお子さんでは、この体温調節がうまく働かない場合があります。
その理由はいくつかあります。
例えば、
筋肉の緊張が強い
筋肉は動くと熱を作ります。
脳性麻痺では、本人が動いていなくても筋肉が緊張していることがあります。
すると、常に身体の中で熱が作られ続けます。
自分で姿勢を変えられない
私たちは暑いと感じると、
日陰へ移動する
上着を脱ぐ
寝返りをうつ
など無意識に身体を動かしています。
しかし、自分で姿勢を変えることが難しいお子さんでは、身体の一部に熱がこもりやすくなります。
特に背中や車いすとの接触面は熱が逃げにくくなります。
汗をかきにくい
障害の種類によっては汗をかきにくいことがあります。
汗は身体を冷やす大切な働きをしています。
汗が少ないと、熱を逃がしにくくなります。
呼吸が浅い
呼吸でも身体の熱は少しずつ放出されています。
呼吸機能が弱いお子さんでは、この放熱もうまくいかないことがあります。
「熱がこもっている状態」とは?
熱がこもる状態では、
顔が赤い
身体が温かい
汗は少ない
室温を下げると落ち着く
水分補給で改善する
休憩すると体温が下がる
といった特徴があります。
例えば、
送迎車から降りた直後、
車いすに長時間座った後、
リハビリや活動の後などに体温が37.8℃程度になることがあります。
しばらく涼しい部屋で休んだだけで36℃台に戻ることも珍しくありません。
このような場合は、身体に熱がこもっていた可能性があります。
本当の発熱とは?
一方で感染症などによる発熱では、
身体が意図的に体温を上げています。
これは細菌やウイルスと戦うためです。
そのため、
ぐったりしている
食欲がない
鼻水や咳がある
嘔吐や下痢がある
寒気がある
何度測っても高い
などの症状を伴うことが多くなります。
また、室温を下げても体温はすぐには下がりません。
見分けるポイント
施設でも私たちが大切にしているのは、
**「体温計の数字だけで判断しないこと」**です。
例えば、
熱のこもり
活動後だけ高い
涼しくすると下がる
元気に遊んでいる
食欲がある
顔色が良い
このような場合は、まず身体を冷やし、水分補給を行い、しばらく様子を見ることがあります。
発熱が疑われる場合
ぐったりしている
表情が普段と違う
呼吸が苦しそう
咳や鼻水がある
繰り返し高熱になる
食事がとれない
このような場合は感染症なども考え、早めにご家庭へ連絡し、必要に応じて医療機関への受診をお願いしています。
障害児だからこそ「普段」を知ることが大切
障害児支援で最も大切なのは、その子の「いつもの状態」を知ることです。
あるお子さんは37.3℃くらいが普段の体温かもしれません。
また別のお子さんは、午後になると少し体温が高くなることが日常かもしれません。
逆に36.8℃でも、
普段より元気がない、
笑顔が少ない、
眠そう、
ということが重要なサインになることもあります。
数字だけでは見えない変化がたくさんあります。
ご家庭と施設が情報を共有することも大切です
私たちは送迎時に、
「昨日は少し熱がこもっていました。」
「今日は朝から少し元気がありません。」
「水分を多めに摂っています。」
など、小さな変化も共有するよう心掛けています。
ご家庭でも、
昨夜眠れたか
食事量
排便
水分摂取
朝の様子
を教えていただけると、お子さんの体調をより正確に判断できます。
こうした情報共有は、安心して過ごしていただくための大切な支援の一つです。
熱中症にも注意が必要です
夏場は「熱のこもり」と熱中症が重なることもあります。
体温調節が苦手なお子さんは、健康なお子さんより熱中症になるリスクが高いといわれています。
そのため施設では、
室温・湿度の管理
こまめな水分補給
エアコンの適切な使用
活動時間の調整
衣服の調整
必要に応じた身体の冷却
などを行い、予防に努めています。
最後に
障害のあるお子さんにとって、「熱が高い」という一つの症状にも、さまざまな原因が考えられます。
身体に熱がこもっているだけの場合もあれば、感染症などによる本当の発熱の場合もあります。
だからこそ大切なのは、体温計の数字だけを見るのではなく、お子さん全体の様子を観察することです。
私たちは日々の支援の中で、お子さん一人ひとりの「いつもの様子」を大切にし、小さな変化にも気付けるよう心掛けています。
これからも、ご家庭と連携しながら、お子さんが安心して楽しく過ごせる環境づくりに努めてまいります。
※この記事は一般的な内容を紹介したものです。高熱が続く場合や、呼吸が苦しそう、意識がはっきりしない、水分が取れないなどの症状がある場合は、熱のこもりと自己判断せず、速やかに医療機関を受診してください。
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