🌿ご家族からのご相談「フケが気になる」から始まった、私たちの小さな取り組み

私たちの施設では、日々ご利用者様お一人おひとりと向き合いながら、安心して過ごしていただけるような支援を心がけています。そんな中、あるご利用者様に関して「フケが気になる」とのご家族からのお声をいただきました。そこから始まった、職員たちの小さな気づきと、ささやかな工夫の積み重ねについて、今回はご紹介したいと思います。

 

ご本人の様子と生活リズム

対象となったご利用者様は、当施設に1日おきで通所されており、ご利用の日は毎回入浴されています。入浴はご本人にとっても楽しみな時間の一つであり、清潔を保つだけでなく、心身のリフレッシュにもつながっています。

 

もともと髪の毛がやや脂性の傾向があり、頭皮のべたつきが見られることもあって、これまでは入浴時に1日3回の洗髪を行っていました。もちろん、毎回の洗髪は職員の手洗いによる丁寧なものです。

 

「フケが出るんです」とのお声から

ある日、ご家族から「最近、フケが多いようなんです。すすぎが十分ではないのではないでしょうか？」というご指摘をいただきました。

 

もちろん、入浴支援の際には洗髪・すすぎを十分に行っているつもりではありましたが、改めて担当スタッフに確認したところ、「すすぎも丁寧にやっており、特別な変化はない」との回答でした。

 

しかし、フケの原因は一つとは限りません。体調や季節、皮膚の状態、シャンプーの種類、洗い方、あるいは回数など、多くの要素が絡んできます。

 

職員の中で生まれた「気づき」

この話を受けて、職員の中からこんな声が上がりました。

 

「もしかしたら、1日に3回も洗っていること自体が、頭皮の刺激になっているのでは…？」

 

脂性であっても、洗いすぎることで皮脂が余計に分泌されたり、頭皮が乾燥して角質がはがれやすくなったりすることもあります。頭皮の状態はとてもデリケートです。清潔を保つためにやっていたことが、実は負担になっていたのかもしれない——その可能性を考えました。

 

洗髪回数の見直しとご家族のご意向

そこで、ご家族に対し、「洗髪の回数を1日1回に減らして様子を見ることをご提案させていただきました」。すると、ご家族からは「それではちょっと不安なので、2回にしてください」とのご要望がありました。

 

ご本人の快適さと、ご家族の安心感のバランスを大切にするために、1日2回に減らしてみることにしました。

 

🧴これまで：1日3回洗髪

→ 🚿変更後：1日2回洗髪

 

もちろん、洗い方やすすぎにもこれまで以上に注意を払いました。

 

フケは減った。でも、それがなぜかは…

変更後、数回の入浴を経たあたりから、職員が気づきました。

 

「あれ？フケが、前よりも少なくなってるかも」

 

洗髪の回数を2回に減らしたことが良かったのか、それとも「すすぎ方」について改めて注意を向けたことが功を奏したのか——それは、はっきりとはわかりません。ただ、結果としてフケの量が減り、ご本人の頭皮も落ち着いたように見えることは確かでした。

 

ご家族からも「最近は気にならなくなってきました」と、安心の声をいただきました。

 

見直すことの大切さ

この出来事は、私たち職員にとって、たくさんの学びがありました。

 

一つひとつは小さなことかもしれません。でも、「いつも通り」だから大丈夫、「以前からこうしているから」という思い込みにとらわれず、ご本人の様子、ご家族の声、職員同士の対話をもとに、支援の内容を柔軟に見直していくことの大切さを、改めて実感しました。

 

ご本人の声なき声に耳を澄ます

福祉の現場では、すべての利用者様が言葉で思いを伝えられるわけではありません。だからこそ、日々の小さな変化や反応に気づき、そこから支援のヒントを読み取ることが求められます。

 

たとえば、頭皮をかくしぐさ、表情の変化、入浴を嫌がる様子、あるいはまったく逆に笑顔が増えることなど…。ご本人の「声なき声」に、どれだけ耳を澄ませられるか。それが、安心で心地よい支援の第一歩だと考えています。

 

ご家族との連携も大切に

今回のように、ご家族の何気ない一言が、大きな気づきと改善のきっかけになることもあります。私たちは、施設内での様子だけでなく、ご家庭でのご様子やお気持ちをうかがいながら、よりよい支援をつくっていきたいと願っています。

 

「ちょっと気になる」「以前と少し違う気がする」——そんな小さなご相談も大歓迎です。どんなことでもお気軽にお声がけください。

 

最後に

「フケが気になるんです」という、ご家族のひとことから始まったこの取り組み。ご本人の快適さを第一に考え、ご家族とともに解決の糸口を探ることができました。

 

そして、こうした経験のひとつひとつが、今後ほかのご利用者様への支援にもつながっていくことを願っています。

 

私たちはこれからも、ご利用者様とご家族の声に耳を傾け、丁寧で思いやりのある支援を続けてまいります。