想いを形に――家族へ届ける、陶芸カップ物語 #2
2025/05/14
4. “家族”というテーマ:「このカップを使って、妻と過ごしたい」
作品づくりの過程で、利用者さんが何度も口にしていた言葉があります。
「これ、うちの奥さんに使ってもらいたいんだ」
その一言に、この陶芸作品が単なる創作物ではなく、“贈り物”であることが強く刻まれていました。
「コーヒーが好きで、毎朝飲んでるんだよ」
「テレビ見ながら一緒に飲む時間が、好きなんだ」
そんな日常の風景を語る利用者さんの顔は、どこか照れくさそうでありながらも、柔らかな優しさに満ちていました。話すうちに、だんだんと声のトーンが弾み、どんなふうにカップを使ってくれるか、どんな反応をしてくれるか――そうした期待が伝わってきました。
スタッフが、「奥さん、喜んでくれると思いますよ」と声をかけると、
「うん……俺が作ったって言ったら、驚くだろうなあ」
と、笑いながら目尻を下げておられました。その瞬間、まるでこれからプレゼントを渡す少年のように見えました。
このカップは、「作ること」そのもの以上に、「誰かのために作る」という行為にこそ意味があったのだと、私たちは気づかされました。相手を思い浮かべながら形にしていく時間――それは、陶芸という表現活動が持つ本質でもあるのかもしれません。
5. 作品の完成と贈呈の瞬間:“使われる”ことで、命を持つカップ
ついに完成の日がやってきました。焼き上がった作品は、落ち着いた緑を基調としながらも、表面にはほんのりと赤みが差しています。その色味のゆらぎが、まるで手作りならではの温もりを宿しているかのようでした。
取っ手の部分はやや幅広く、指をしっかりと通すことができます。飲み口もなめらかで、縁が少し波打っていることで口当たりもやさしい。見た目だけでなく、実用性も考えられた設計です。
作品が箱に丁寧に包まれ、持ち帰られた後のこと――後日、奥様からスタッフあてに感謝のメッセージが届きました。
「夫がこんなに丁寧に、時間をかけて作ってくれたなんて、胸がいっぱいになりました。
毎朝、夫と一緒にコーヒーを飲むのが楽しみになっています。とても大切な宝物です」
その言葉を読んだとき、スタッフ一同、目頭が熱くなるのを感じました。作った本人に伝えると、利用者さんは少し照れながらも、ふふっと笑い、「じゃあ、また何か作ってみようかな」とつぶやきました。
器が使われることで、作品は“生きる”のだと思います。そしてそれが誰かの手に渡り、日々の時間に寄り添うことで、さらに深く意味づけられていく――そんな瞬間を、私たちは目の当たりにしたのです。
6. スタッフのまなざし:支える側にも“学び”がある
今回の作品づくりを通して、私たちスタッフも多くのことを学ばせてもらいました。
まず、**「失敗が失敗で終わらない」**ということ。ビールジョッキとして構想されたカップが、縮んでしまったこと。それを「失敗」ではなく、「コーヒーカップとしてちょうどいい」と受け止めた利用者さんの姿勢は、私たちにとって大きな気づきでした。創作活動において、“思い通りにいかないこと”をどう活かすか。それは、日々の支援や生活にも通じるテーマです。
また、**「相手を想う力は、言葉を超える」**ということも印象的でした。作品の中に込められた奥様への想い――それは、言葉ではなく、形や質感、色味にまで表現されていました。そのひとつひとつを読み取ることで、利用者さんの内面に深く触れることができたと感じています。
そして何より、**「創作は対話の一つのかたち」**であるということ。制作中に交わされる何気ない会話や、表情の変化、それぞれの選択――それらはすべて、私たちとの“対話”でした。言葉だけではなく、手を動かすことでこそ伝わる想いがあり、支援者としてそれを受け取る感度を磨く必要があると感じました。
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