株式会社キャッチ・ザ・レインボー

想いを形に――家族へ届ける、陶芸カップ物語

お問い合わせはこちら

想いを形に――家族へ届ける、陶芸カップ物語

想いを形に――家族へ届ける、陶芸カップ物語

2025/05/10

1. はじめに:ものづくりの中に宿る“想い”

生活介護の現場では、日々さまざまな創作活動が行われています。絵画、折り紙、書道、編み物……。その中でも特に深い時間の流れと集中を必要とするのが、「陶芸」です。手のひらで粘土を練り、形を整え、乾かし、焼き、色をのせる――たったひとつのカップが完成するまでに、いくつもの工程と、何より心が注がれていきます。

 

今回ご紹介するのは、そんな陶芸活動の中で生まれた、あるコーヒーカップの物語。作り手は、生活介護を利用されている一人の男性利用者さん。そしてそのカップは、彼の大切な人――奥様のために作られました。

 

「自分の手で何かを作り、それを妻に届けたい」

 

そんな静かだけれども力強い思いが、この一つの陶器に込められているのです。

 

本記事では、そのカップが生まれるまでの過程と、そこに込められた想いを丁寧に紐解いていきます。ただの“ものづくり”ではない、心のやり取りと人生の断片をお届けできれば幸いです。

 

2. 作品の紹介:縮んでしまった“偶然”が生んだコーヒーカップ

作品が生まれたのは、何気ない午後の創作活動の時間でした。陶芸が好きな利用者さんは、「今日はビールジョッキを作ろうかな」とにこやかに話しながら、分厚めの粘土を手に取りました。日常の延長にある、くつろぎのひとときを想像していたのかもしれません。

 

ろくろではなく、手びねりで丁寧に形作られたそのジョッキは、分厚くどっしりとした印象でした。取っ手の位置や形状にもこだわりがあり、「持ちやすさ」や「重量感」まで計算されていたように見えました。

 

しかし、焼成を終えた作品を窯から取り出してみると、スタッフたちは思わず「あれっ」と声を漏らしました。――明らかに小さいのです。予定していたビールジョッキのサイズからは程遠く、手のひらにすっぽりと収まるようなサイズに縮んでいました。

 

「焼くと、粘土って縮むんだなあ」

 

利用者さんは苦笑しながらも、そのカップを手に取り、しばらくじっと見つめていました。そして、ふっと表情をやわらげながら言いました。

 

「これはこれでいい。妻がコーヒーを飲むのに、ちょうどいい大きさかもしれないな」

 

その一言で、スタッフたちは思わず胸が熱くなりました。作品の“失敗”と思われたものが、“贈り物”としての新しい意味を持った瞬間でした。

 

3. 陶芸の工程を丁寧に振り返る:土に触れ、想いを込める日々

陶芸には、多くの工程があります。一つひとつを丁寧に進めていく必要があるため、完成までには1か月以上かかることも珍しくありません。今回の作品も、約6週間をかけて完成まで導かれました。その時間の中で、利用者さんは何を感じ、どう作品と向き合っていたのでしょうか。

 

【1】成形:形にする最初の一歩

制作は、まず粘土をこねるところから始まります。粘土の塊を手で押し、練り、柔らかくしていく。時間がかかる作業ですが、「土に触れると落ち着く」と語る利用者さんは、丁寧にその感触を楽しむように作業されていました。

 

形作りは手びねりによるもので、型を使わず指先の感覚を頼りに行われました。ジョッキの太さを保ちながら、ややゆがみを持たせた縁が、逆に温もりを感じさせます。取っ手のつけ方にも工夫があり、「妻が使うこと」を意識して、やや大きめのサイズで手が入りやすいように仕上げられました。

 

【2】乾燥:焦らず、じっくり待つ

形ができたあとは、数日間かけてじっくりと自然乾燥。焦ってしまうとひび割れや変形の原因になるため、ここでも「待つこと」が大切です。作品の様子を何度も確認しに行く利用者さんの姿が印象的でした。

 

「ちゃんと乾いてるかな」「崩れてないかな」

 

まるで育てるように、日々の観察が続きました。

 

【3】素焼きと釉薬がけ:色をまとう“衣装選び”

乾燥が済んだ後は、素焼き。約800度の低温で焼くことで、粘土の中の水分を抜き、しっかりとした素地にします。この段階で作品はやや明るい色合いになりますが、本番はここからです。

 

釉薬(ゆうやく)選びでは、落ち着いた緑を中心にした色を希望されました。「あまり派手じゃないほうがいい。落ち着いたやつ」とおっしゃっていましたが、最終的には赤みのあるアクセントが加えられ、自然なグラデーションに仕上がりました。

 

釉薬のかけ方にも個性が表れます。丁寧に塗られた部分と、あえて残したマットな素地の表情――そのバランスが、世界にひとつだけの風合いを生み出しました。

 

【4】本焼き:命を吹き込む最終工程

本焼きは、約1,200度という高温で一気に焼き上げます。この工程で、釉薬の色味や艶、そして器そのものの強度が決まります。焼き上がった瞬間を目の前にしたときの利用者さんの表情は、忘れられません。

 

「おお……、きれいに焼けたな」

 

作品をそっと手に取り、しばらく黙って眺めていたその眼差しに、「想い」がきちんと形になったことへの満足感がにじんでいました。

 

次回は、この話の続きをお届けいたします。

----------------------------------------------------------------------
児童発達支援と放課後等デイサービス 虹をつかもう
栃木県足利市八椚町381-8
電話番号:0284-64-9483

生活介護  虹をつかもう
栃木県足利市八椚町388-3
電話番号:0284-64-8135


足利市の児童発達支援と放課後等デイサービス 虹をつかもう

足利市の生活介護 虹をつかもう

足利市周辺の放課後等デイサービス

足利市にて生活介護プランを案内

足利市にて小児リハビリのケア

足利市で重症心身障がい児の対応

----------------------------------------------------------------------

当店でご利用いただける電子決済のご案内

下記よりお選びいただけます。